会議資料を作るとき、いちばん最初に何を書いていますか。結論からお伝えすると、会議を短く、決まるものにしたいなら、資料の1枚目に「この会議で決めてほしいこと」を一文で書くのがいちばんの近道です。背景や経緯の説明はそのあとで十分間に合います。この記事では、私たちTylorが社内外の打ち合わせ資料で実践している「1枚目のつくり方」と、その背景にある考え方、そして経営者・担当者の方が明日から試せる小さな工夫をまとめます。
実務でよくある困りごと——説明は終わったのに、何も決まらない
会議の資料は、たいてい丁寧に作られています。これまでの経緯があり、現状のデータがあり、比較した選択肢があり、最後に「ご検討ください」と結ばれている。作った人の努力がよく伝わる資料です。
ところが、その資料を使った会議が、思ったように進まないことがあります。担当者が最初のページから順に説明していくうちに、参加者は手元の資料をめくり始め、気になった数字について質問が出ます。その質問に答えているうちに時間が過ぎ、最後のページにたどり着いたころには、残りは数分。「では、もう少し検討して次回に」と持ち越しになってしまう。経営会議でも、部署の定例でも、よく見かける光景ではないでしょうか。

この原因は、資料の出来が悪いことではありません。むしろ多くの場合、中身はよく調べられています。問題は順番です。資料が「作った人が考えた順番」で並んでいるため、参加者は最後まで聞かないと、自分が何を判断すればよいのかが分かりません。目的が分からないまま説明を聞くと、人は自然と細部に目が向き、気になったところから質問を始めます。会議が脱線するのは、参加者の集中力の問題というより、資料の並び方の問題であることが多いのです。
Tylorとしての解決アプローチ——1枚目を「お願いのページ」にする
私たちは、何かを決めてもらう必要がある会議では、資料の1枚目を「お願いのページ」と呼んで、次の3つだけを書くようにしています。
1. この会議で決めてほしいこと(一文で)
「来期の展示会への出展を、A案で進めてよいかを決めていただきたいです」のように、相手が「はい」か「いいえ」、あるいは「どれにするか」で答えられる形の一文にします。「出展について」「ご報告とご相談」のような題名だけでは足りません。一文にしようとして手が止まるなら、それは資料の問題ではなく、まだ自分の中で「何を決めてほしいか」が固まっていないという合図です。その場合は資料を作る前に、上司や関係者と一度話しておくほうが早く進みます。
2. 担当者としてのおすすめと、その理由(三つまで)
選択肢を並べて「どれがよいでしょうか」と委ねるのではなく、担当者としての案を先に示します。理由は三つまでに絞ります。おすすめを書くのは勇気がいりますが、判断する側にとっては、たたき台があるほうがずっと考えやすくなります。おすすめが通らなかったとしても、「なぜ違うのか」という話から議論が始まるので、会議は前に進みます。
3. 決まらなかった場合に困ること
「今月中に決まらないと、申し込みの締め切りに間に合いません」のように、判断を先送りしたときに何が起きるかを一行添えます。これがあるだけで、会議の参加者は「今日決める理由」を共有できます。

経緯や詳しいデータ、比較表は、2枚目以降に置きます。削るのではなく、後ろに回すのがポイントです。質問が出たときに「それは4枚目にあります」と示せるように、付録として残しておきます。会議の冒頭では1枚目だけを読み上げ、「今日はこれを決めたいと思っています。気になる点から伺えますか」と始める。それだけで、会議の流れは大きく変わります。
そこにある原理原則——人は「何を判断するか」が分かって初めて、説明を聞ける
このやり方の背景にあるのは、とてもシンプルな原則です。聞き手は、自分が何を判断するのかを知って初めて、説明を「判断の材料」として聞けるということです。
目的を知らされずに説明を聞くのは、行き先を知らされずに道案内を聞くようなものです。どの曲がり角が大事なのか分からないので、すべてを覚えようとするか、途中で聞くのをやめてしまいます。反対に、最初に「駅まで行きます」と言われていれば、必要な情報だけを拾いながら聞くことができます。会議資料も同じで、1枚目で行き先を示しておけば、参加者は2枚目以降を「その判断に必要な材料」として読んでくれます。
もう一つ大切なのは、1枚目を書くことが作り手自身の考えを整理する作業でもあるという点です。決めてほしいことを一文にし、おすすめと理由を三つに絞る。この作業をすると、資料のどこが本当に必要で、どこが「念のため入れておいた説明」なのかが自然と見えてきます。資料が短くなるのは、情報を減らしたからではなく、伝える順番と重みがはっきりしたからです。この考え方は、学会や講演のスライドを「持ち帰ってほしい一つ」から組み立てる方法とも共通しています。詳しくは「持ち帰ってほしい一つ」から逆算する4つの手順の記事でもご紹介しています。
経営者・担当者への示唆——「1枚目だけ先に見せて」と頼んでみる
経営者や管理職の方におすすめしたいのは、資料を受け取る側から仕組みを変えることです。部下や担当者に会議資料をお願いするとき、「全部できてから見せて」ではなく、「まず1枚目だけ先に見せてください」と頼んでみてください。決めてほしいこと、おすすめ、決まらないと困ること。この3つが一枚にまとまっていれば、資料の残りは半分できたようなものですし、方向がずれていればその時点で修正できます。担当者が何十枚も作り込んでから「そもそもの問いが違った」と分かる、という手戻りを防げます。

担当者の方は、次の会議資料で、表紙のすぐあとに一枚だけ「お願いのページ」を足してみてください。既存の資料を作り直す必要はありません。一枚足して、会議の最初にそこを読み上げるだけです。おすすめを書くことに迷いがあれば、「担当者としてはA案が良いと考えています。理由は次の三つです」と書き出してみると、意外なほど自然に言葉が出てきます。
なお、すべての会議に「お願いのページ」が必要なわけではありません。情報共有だけが目的の会議なら、1枚目には「今日いちばん知っておいてほしいこと」を一文で書けば十分です。大切なのは、聞き手が最初の一分で「この時間で自分は何をすればよいか」を分かる状態をつくることです。
よくある質問(FAQ)
Q. 結論を先に書くと、反対されたときに説明不足に見えませんか?
A. 経緯やデータは2枚目以降に付録として残しておけば大丈夫です。質問が出たら該当のページを示して答えればよく、むしろ「聞かれたことにすぐ答えられる」準備ができている印象になります。
Q. 担当者として、おすすめを書いてよいか迷います。
A. 書いたほうが会議は早く進みます。判断する側は、ゼロから考えるより、たたき台に対して「賛成」「ここは違う」と答えるほうがずっと楽だからです。おすすめが通らなくても、その理由を聞けること自体が次の仕事に役立ちます。
Q. 決めてほしいことが複数ある場合は、どうすればよいですか?
A. 1枚目に番号を振って並べ、重要な順、または先に決めないと次が決められない順に並べます。ただし、一つの会議で決められることは多くて三つ程度です。それ以上ある場合は、会議を分けることも検討してみてください。
Q. 社外への提案資料でも同じ考え方は使えますか?
A. 使えます。提案資料の場合は「今日ご判断いただきたいこと」や「ご提案の要点」を最初に置きます。相手の会社の中で資料が回覧されることを考えると、1枚目だけで要点が伝わる構成は、なおさら効果があります。
Tylorでは、数時間お話を伺い、ご本人の言葉で資料を仕上げています。
まずは30分、資料の構成を一緒に整理することから始められます。
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