学会や講演の準備を始めると、伝えたいことが次々に浮かび、気づけばスライドが60枚を超えている。削ろうとしても、どれも大事に思えて手が止まる。資料づくりのご相談で、私たちTylorがよく伺うお悩みです。
結論からお伝えすると、スライドの構成は「聞き手に持ち帰ってほしい一つ」から逆算すると迷わなくなります。聞き手を一人に絞り、持ち帰ってほしい一文を決め、その一文を支える材料だけを残して、「結論→根拠→補足」の順に並べる。この記事では、この4つの手順と、構成を組み直す前と後の目次の違いをご紹介します。
スライドが増えるほど、伝わらなくなる理由
スライドの枚数が増えるのは、熱心に準備をした証拠でもあります。ただ、聞き手の側から見ると、事情が少し違います。講演の時間は限られていて、聞き手が一度に覚えておけることも多くはありません。話題が10あれば、その一つひとつは10分の1の重さでしか届きません。
もう一つの理由は、話し手の頭の中にある順番と、聞き手が理解しやすい順番が違うことです。準備の段階では、背景から始めて、これまでの経緯、事例、考察、まとめと、調べた順番に並べたくなります。けれど聞き手は、最後の「まとめ」に来るまで、何の話を聞いているのかが分かりません。途中で集中が切れてしまうと、いちばん大事な結論が届かないまま講演が終わってしまいます。
つまり、枚数を減らすこと自体が目的ではありません。先に「何を持ち帰ってもらうか」を決めていないことが、スライドが増えてしまう本当の原因です。
「持ち帰ってほしい一つ」から逆算する4つの手順

手順1:聞き手を一人に絞る
「会場の全員」に向けて話そうとすると、説明はどうしても平均的になります。まずは、いちばん届けたい一人を思い浮かべてください。たとえば「経験5年目くらいで、明日から自分の現場で試したいと思っている人」のように、経験や立場、困っていそうなことまで具体的にします。この一人が決まると、どこまで説明すればよいか、どの言葉なら伝わるかが判断しやすくなります。
手順2:持ち帰ってほしい一文を決める
次に、その一人に「今日はこれだけ覚えて帰ってください」と言える一文を書きます。ポイントは、テーマではなく文にすることです。「〇〇について」では足りません。「〇〇のときは、△△を先に確認したほうがよい」のように、主語と述語のある一文にします。ここが最も時間のかかる工程ですが、ここに時間をかけるほど、あとの作業が早くなります。
手順3:その一文に必要な材料だけを残す
一文が決まったら、手元の事例やデータを一つずつ見て、「これはあの一文を支えているか」と問いかけます。支えていないものは、どれほど手間をかけて集めたものでも、今回は外します。外した材料は捨てる必要はありません。質疑応答のための予備スライドとして、最後に回しておけば安心です。
手順4:「結論→根拠→補足」の順に並べる
最後に並べ方です。冒頭で持ち帰ってほしい一文を伝え、そう言える理由を2〜3つ示し、補足や注意点を添えて、締めくくりでもう一度同じ一文を言います。最初と最後に同じ一文があると、途中で集中が途切れた聞き手も、結論だけは持ち帰ることができます。
構成の前と後で、目次はこう変わります
ある講演資料の例を、内容を抽象化してご紹介します。組み直す前は、自己紹介から背景、これまでの報告、事例が4つ、考察、まとめと、9つの項目が準備した順に並んでいました。

組み直したあとは6項目です。冒頭に「今日お伝えしたい一文」を置き、そう言える理由を2つ、代表的な事例を一つだけ示し、補足と注意点を添えて、最後にもう一度同じ一文で締めます。事例は4つから1つに減りましたが、外した3つは予備のスライドに回しています。項目は減っても、話し手が伝えたいことはむしろはっきりしました。
構成が決まれば、デザインは早く進みます
構成が決まっていない状態でスライドを作り始めると、デザインを整えたあとで順番を入れ替えたり、1枚まるごと消したりすることになります。せっかく揃えた体裁を何度も崩すことになり、時間がかかるわりに仕上がりが落ち着きません。反対に、一文と順番が先に決まっていれば、デザインは決まった材料を見やすく並べる作業になります。
AIで下書きを作る場合も同じです。私たちも情報の整理や下書きにはAIを使っていますが、持ち帰ってほしい一文を決めてから頼むと、出てくる構成案がぐっと絞られます。一文を決めないまま頼むと、どこかで見たような平均的な構成になりやすいのです。この点は、講演資料が「AI感」になる理由をまとめた記事でも詳しく触れています。
明日できることは一つです。次に話す予定の講演について、スライドを開く前に、紙に「今日はこれだけ覚えて帰ってください」と書き、その続きを一文で埋めてみてください。5分で書けなければ、それが構成で迷っている理由です。一文が書けたら、そこから逆算して目次を作ってみてください。
よくある質問
Q. 持ち帰ってほしいことが、どうしても一つに絞れません。
A. 候補を3つほど書き出して、「聞き手が明日すぐ使えるのはどれか」で選んでみてください。選ばなかった2つは、根拠や補足として講演の中に残せることが多いです。どうしても絞れない場合は、講演を2回に分けるつもりで考えると整理しやすくなります。
Q. 学会発表のように、構成の型が決まっている場合はどうすればよいですか?
A. 決められた型の順番はそのまま守ってください。そのうえで、冒頭の数枚と最後のまとめに、持ち帰ってほしい一文をはっきり書くだけでも、伝わり方は大きく変わります。
Q. 外した事例やデータは、どう扱えばよいですか?
A. 本編から外して、最後に予備のスライドとしてまとめておくのがおすすめです。質疑応答で聞かれたときにすぐ見せられますし、次の講演の材料にもなります。
Q. 構成を考えるのに、どのくらい時間をかければよいですか?
A. 講演1本であれば、聞き手を絞って一文を決めるまでに1〜2時間ほどが目安です。全体の準備時間の中では短く見えますが、ここが決まると、スライドづくりや修正の時間が大きく減ります。
Tylorでは、先生から数時間お話を伺い、先生の言葉で資料を仕上げています。
まずは30分、資料の構成を一緒に整理することから始められます。
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