「持ち時間は20分です」と言われて、まず気になるのが「スライドは何枚くらい作ればいいのか」ではないでしょうか。よく聞く目安は「1枚1分」です。ただ、この目安をそのまま当てはめると、多くの場合は本番で時間が足りなくなります。
先に結論をお伝えします。スライドの枚数は、時間から割り算で決めるものではなく、「話す内容」を時間に配分した結果として決まるものです。おすすめの順番は次の3つです。
- 持ち時間の8割で話し終える前提で、使える時間を決める
- 時間を「導入・本題・まとめ」に配分し、本題の中で話す項目に割り振る
- 項目ごとに枚数を決め、通しで時間を測ってから削る
この記事では、それぞれの手順と、なぜ「1枚1分」が当てにならないのかを、資料づくりの現場で見てきたことをもとにお伝えします。
「1枚1分」で作ると、なぜ時間が足りなくなるのか
「1枚1分」という目安自体が間違っているわけではありません。平均すれば、だいたいそのくらいに落ち着く発表は多いと思います。問題は、1枚にかかる時間がスライドによって大きく違うことです。
表紙や章の区切りのスライドは10秒で通り過ぎます。一方で、グラフや比較表のスライドは、読み方を説明して、数字の意味を伝えて、聞き手が理解するのを待つだけで2〜3分かかることがあります。写真を1枚見せて「ご覧のとおりです」と言うだけなら20秒ですが、写真の中の注目点を指し示しながら話せば1分半はかかります。
そして実際の発表では、ここに「想定外の時間」が加わります。導入で少し場を和ませる一言、聞き手の反応を見ての補足、機材の切り替え、マイクの受け渡し。どれも数十秒ずつですが、積み重なると数分になります。20分の枠に20枚を用意すると、最後の数枚を早口で流す、あるいは飛ばすことになりやすいのはこのためです。
もうひとつ見落とされがちなのが、練習のときの話す速さと、本番の話す速さは違うという点です。人前に立つと、間を取ったり言い直したりで、手元で読み上げたときより1〜2割ほど遅くなるのが普通です。

Tylorが枚数を決めるときの3つの手順
Tylorで講演や説明会の資料を整えるときは、枚数を最初に決めません。先に時間の使い道を決め、そのあとで枚数を出します。
手順1:持ち時間の「8割」を使える時間にする
20分の枠なら、話す内容は16分ぶんで組み立てます。残りの4分は、先ほどの「想定外の時間」と、本番で遅くなるぶんの吸収にあてます。質疑応答が枠に含まれている場合は、質疑の時間を先に差し引いてから8割を計算してください。
「余らせるのはもったいない」と感じるかもしれませんが、時間が余って困る発表はほとんどありません。少し早く終わった発表は「よくまとまっていた」と受け取られますが、時間を超えた発表は内容に関係なく印象が下がってしまいます。
手順2:「導入・本題・まとめ」に時間を配分する
使える時間が決まったら、大きく3つに分けます。目安は導入1〜2割、本題6〜7割、まとめ1〜2割です。16分なら、導入2〜3分、本題10〜11分、まとめ2〜3分といったところです。
本題の時間は、さらに話す項目ごとに割り振ります。「伝えたいことが3つあるなら、それぞれ3分半ずつ」というように、項目単位で時間を持たせるのがポイントです。ここで時間が足りないと感じたら、それは枚数ではなく項目の数が多すぎるというサインです。何を一番持ち帰ってほしいかを決め直すほうが、スライドを詰め込むより確実に伝わります。この考え方は「学会・講演スライドは「持ち帰ってほしい一つ」から逆算する」でも詳しくご紹介しています。
手順3:項目ごとに枚数を決め、通しで測る
項目ごとの時間が決まれば、枚数は自然に出てきます。3分半の項目なら、「問いかけ1枚、図で説明2枚、まとめ1枚」で4枚、というように、話の流れに沿って必要な枚数を置いていきます。結果として、16分の発表で12〜20枚程度に収まることが多いのですが、これはあくまで結果です。図の説明が中心なら少なく、写真を順に見せる構成なら多くなって構いません。
そして必ず、声に出して通しで時間を測ります。頭の中で読むのではなく、実際に声を出し、スライドを送りながら測ることが大切です。項目ごとに何分かかったかをメモしておくと、どこを削ればよいかがすぐに分かります。

時間が超えたときは「削る」より「本編から外す」
通しで測って時間を超えたとき、多くの方は各スライドの説明を少しずつ短くしようとします。ただ、これをすると発表全体が早口になり、どこも中途半端に聞こえてしまいます。
おすすめは、スライドをまるごと本編から外し、資料の最後に「補足」としてまとめておく方法です。詳しいデータ、細かい条件、例外の説明などは、質疑応答で聞かれたときに見せれば十分なことが多いものです。外したスライドは捨てるわけではないので、作った手間も無駄になりません。
質疑で使う補足スライドの準備のしかたは、「プレゼンの質疑応答の準備」の記事でも触れています。

そこにある原理原則:枚数は「話の設計図」の結果です
ここまでの手順に共通しているのは、スライドは話を支える道具であり、話の量を決めるのはスライドではないという考え方です。
枚数から先に決めると、「20枚を埋めるために何を話そうか」という順番になり、話の中身がスライドに引っ張られます。反対に、時間と項目から決めると、「この話を伝えるには何枚の絵が必要か」という順番になります。後者のほうが、スライド1枚ごとの役割がはっきりし、聞き手にとっても今どの話をしているのかが分かりやすくなります。
これは資料づくりに限った話ではありません。会議の議題も、文章の段落も、限られた時間や紙面の中で何を優先するかを先に決めると、全体が締まります。量の目安は便利ですが、目安は「確かめるための物差し」として使い、出発点にはしないほうがうまくいきます。
資料をつくる方、任せる方へ
発表の準備で時間が足りなくなる原因の多くは、スライドを作り始めるのが早すぎることにあります。いきなりスライドの作成ソフトを開く前に、紙1枚に「使える時間」と「項目ごとの持ち時間」を書き出してみてください。10分もかからない作業ですが、そのあとの作業が驚くほど迷わなくなります。
また、資料づくりを社内の誰かや外部に任せる場合も、「20枚くらいで」と枚数で頼むより、「持ち時間20分、質疑5分、伝えたいことはこの3つ」と時間と項目で伝えるほうが、意図に沿った資料が早く上がってきます。AIに構成案を出してもらう場合も同じで、時間と項目の条件を渡すと、出てくる案がぐっと使いやすくなります。
明日の資料づくりで、ひとつだけ試していただくとすれば、「持ち時間の8割」で一度通してみることです。それだけで、本番の安心感が変わるはずです。
よくある質問
Q. 発表時間10分なら、スライドは何枚が目安ですか?
使える時間を8分と考え、導入1〜2分、本題5〜6分、まとめ1分程度に配分すると、6〜12枚ほどに収まることが多いです。ただし枚数は結果なので、図の説明が中心なら少なめ、写真を順に見せるなら多めで構いません。
Q. 「1枚1分」の目安はまったく使えないのですか?
使えます。ただし出発点ではなく、作り終えたあとの確かめに使うのがおすすめです。全体の枚数が時間を大きく超えていたら、項目が多すぎないかを見直すきっかけにしてください。
Q. 通しの練習で時間を測る時間がありません。
全体を通せない場合は、一番時間のかかりそうな項目だけでも声に出して測ってみてください。1項目の実際の時間が分かるだけでも、全体の見通しはかなり正確になります。
Q. 本編から外した補足スライドは、配布資料に入れてもよいですか?
はい、入れて構いません。むしろ、本編では話さなかった詳しい情報を後から読めるようにしておくと、聞き手にとって親切です。配布用には補足も含めた完全版を用意し、発表では本編だけを使う、という使い分けがおすすめです。
Tylorでは、数時間お話を伺い、ご本人の言葉で資料を仕上げています。
まずは30分、資料の構成を一緒に整理することから始められます。
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